工務店 三重のこんな進化
実質実効為替レートの動きを見ると、ごく最近まで、歴史的にも異例なほど円安であったことが分かる。
円ドルレートだけを見ていると、超円安と言っていいほどのこの円安は理解しにくいが、2000年以降日本も資源国もアジア諸国も、ドルに対して通貨高になっていった。
円とドルだけが安かったのだ。
そのドルに対しても、実は円レートはかなりの円安であった。
その理由は、日本のデフレと深い関わりがある。
日本の物価は1995年と2007年でほとんど違いがない。
この間にデフレがあり、物価が下がった時期があるからだ。
一方の米国を見ると、この10年強の間に物価は30%ほど高くなっている。
30%というとずいぶん上がったように思われるかもしれないが、年率換算すれば、3%を少し切る程度の物価上昇率である。
つまり、1995年から2007年にかけて、日米で物価が120%ほど禿離したことになる。
ということは、たとえば2007年に一ドル120円であったとしても、1995年の感覚で言えば30%の物価ギャップ分を調整すると156円ということになる。
相当の円安なのだ。
これだけの円安であるから、日本の輸出が好調なのは当然だった。
たとえば自動車を例にとれば、米国のビッグスリーだけでなく、ドイツや韓国の自動車メーカーに対しても、日本メーカーはコスト上有利な状況にあったのだ。
欧州のユーロはドルよりもさらに高かったので、より有利な条件であったと言ってよいかもしれない。
もちろん、自動車だけでなく、あらゆる輸出企業が有利な状況にあった。
円安で有利になったのは、輸出企業だけではない。
海外からの輸入品と競争している国内産業も競争しやすい環境にあったのだ。
国内の中小企業にとってみれば、円高であれば海外から安い製品や部品がたくさん入ってくるだろう。
そうした企業もまた円安に守られていたと言える。
なぜこれだけの円安の状況になっていたのか、その理由を明確にするのは難しい。
為替レートの動きは、しばしば理論を超えた不思議な動きをするからだ。
ただ、いくつかの理由らしきことを考えることはできる。
一つは、この時期の日本が世界の主要国の中でもっとも経済的に低迷していたことがあげられる。
バブル崩壊後の失われた10年と呼ばれるデフレ状態からは何とか脱却しつつあったが、依然として経済回復力は弱かった。
政策や制度を根本から変えるような大きな改革を行うことができなかったことも関係があるかもしれない。
もう一つ、超低金利の状態を続けた金融緩和政策の影響もあるだろう。
市場関係者は、日本の低い金利でお金を調達して、海外の高い金利のマーケットで運用する、いわゆるキャリートレードの存在を超円安の理由としてあげている。
もちろん、そうした影響もあるだろうが、キャリートレードだけでどこまで円安が説明できるのかは分からない。
そもそも金利差だけで為替レートの動きが説明できるわけではない。
もし説明できるなら、なぜこの時期に欧州通貨や資源国の通貨が、円だけでなく、ドルに対しても通貨高になったのかが分からないのだ。
理由はともあれ、2000年以降、急激に円安が進んだ。
過度に輸出に依存した経済体質を促したという面もあるだろう。
ただ、20年に一度というような超円安がいつまでも続くという保証はあまりない。
世界的な金融危機が起こる、起こらないにかかわらず、円高方向に為替レートが動いていく可能性は十分に考えられた。
よくあることだが、為替レートの流れを大きく変えたのは、今回も大きな経済混乱であった。
世界的な金融危機が円レートを急速に円高方向に動かす契機になったのだ。
しかも、その動きはあまりにも速く、かつ急激であった。
「円高」という名の「円安修正」が起きている
実質実効為替レートで見た円レートは2007年7月に底を打った。
そこからは急速に円高方向に動いていく。
特に2008年9月のリーマンショック後は、驚異的なスピードで円高に移行している。
円はドルに対しても円高になっているが、ユーロやポンドなどの欧州通貨や、オーストラリアやカナダなどの資源国通貨、アジアの通貨などが軒並み円やドルに対して下がり始めたことが、円レートの動きにより大きな影響を及ぼしている。
急速な円高は、輸出企業や輸入品と競合する国内産業に大きな打撃を与えている。
日本経済を牽引してきたT自動車が、2009年3月期の連結決算で、83年6月期の連結決算開示以降初めての営業赤字転落となるというニュースは大きなショックをもって受け止められた。
世界的な自動車需要の縮小という要因が大きいのはたしかだが、急速な円高の動きもそれに追い打ちをかけた。
円高の影響を受けたのは自動車だけではない。
あらゆる輸出産業が影響を受けたのだ。
円レートは決して円高水準になったわけではない。
グラフから見るかぎりは、超円安のレートが修正され、過去のトレンドから見れば平均的な水準にまで戻ったにすぎない。
円安からの移行スピードがあまりにも速いのでその影響が大きいことは事実だが、今の為替レート水準で大騒ぎをするほどのこともないように思われる。
もっとも為替市場は日々激しく動いているので、この原稿が世に出る頃には、もっと円高に進んでいるかもしれない。
いずれにしろ、リーマンショック以降の数ヵ月間に起きた急速な為替レートの変動は、円高が行き過ぎているというわけではないのだ。
現状のような水準(一ドル90円程度)に為替レートが止まる可能性も十分にあるし、これからさらに円高が進行するリスクも無視できない。
もちろん、将来の為替レートの動きを予想することはできない。
さらに円高が進む可能まず考えておかなければならないことは、なぜドル高になったのか、ということだ。
日本から見ればドル高と言われてもピンとこないかもしれないが、リーマンショック以降、世界では円とドルだけが高くなっている。
その円はドルに対しても高くなっている。
したがって、ドルは円以外の通貨に対しては高くなっているのだ。
ドルは金融危機の震源である米国の通貨であるのに、その金融危機の結果、ドル高になるというのはいかにも理解しにくい現象である。
今回の為替レートの変動の直接的な原因が金融危機であることを考えれば、実は納得のいく説明が可能である。
要するに、金融危機の最中にあって、投資家にとってもっとも安全な運用先はドルや円であるということである。
なぜだろうか。
たしかに、米国の多くの金融機関は破綻した。
速やかに政府が入り込んできて、大手金融機関への資本注入を行い、不良債権を買い上げ、金融機関を保護する姿勢を打ち出した。
金融機関の国有化が起きていると言ってもよいだろう。
その結果、今や米国の金融機関は非常に安全な存在となったのである。
だから世界の資金が、ユーロや新興国市場からドルへと集まってくるのだ。
問題は、こうした状態がいつまでも続くのか、ということだ。
今のドル相場が金融危機の中での一時的な緊急相場であるとしたら、その先に、経済構造の変化を反映した実体経済相場へと移行する可能性は十分にある。
難しいのは、そのときにドル安になるのか、ドル高になるのかが、分からないことだ。
ドル安、つまりドルが大きく値を下げる可能性は否定できない。
米国が大幅な貿易赤字や経常収支赤字を出してきたことと関係がある。
実際、この10年ほどの米国の貿易収支や経常収支の赤字の増え方は尋常ではなかった。
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